蒔絵&螺鈿ランディングネット第2弾 |
第2弾として花梨瘤グリップに深山川蜻蛉(ミヤマカワトンボ)をデザイン化した
ランディングネットの紹介です。
銘は『渓蜻蛉』かわとんぼと読みます。夏の渓流釣行
でよく目にするあのトンボであります。渓流沿いの石や岩といったストラクチャーに
止まって羽根をやすめている姿を目にしたアングラーも多いのではないでしょうか。
羽根には夜光貝を象嵌し金粉蒔絵と銀粉蒔絵をほどこしています。また水の流れを
表したグリップエンドの流紋付近には夜光貝粉を蒔き、水しぶきを表現しています。
これらのモチーフには一貫したわたしの制作意図があります。
それは、「Animizum」=アニミズムです。
アニミズムとは自然の森羅万象に魂(たましい)は宿るという思想で、昆虫や植物、
水や風といった形をとどめないものの中にも魂は存在するとした思想です。
もともとは西洋からもたらされた思想のようですが、日本には桜の花に哀愁を感じたり
鈴虫の音に秋の侘しさを知ったりするという日本古来のアニミズムの思想が色濃く
受け継がれていることを知ってほしいのです。
エミール・ガレがガラスランプの中にトンボやキノコといった造形を閉じ込めたように、
ぼくは日本の自然のごく一部をランディングネットというアングラーの道具のひとつに
閉じ込めたかったのです。
これを背中に背負って渓流を遡行する。自然と一体になったアングラーの姿が
ぼくには見える気がします。